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金箔が見えなくなったのは何が入ったビーカーかな?

正解は、「傷口消毒用希ヨードチンキ」でした!そのしくみとは?

金箔が見えなくなってしまった傷口消毒用希ヨードチンキを入れたビーカー。
ヨードチンキの中の金箔はどうなってしまったのでしょう?透明になって見えなくなったのでしょうか?それとも蒸発してなくなってしまったのでしょうか?

実は、消えたのでも蒸発したのでもなく、形を変えてちゃんとビーカーの中に存在しています。

希ヨードチンキは、ヨウ素(I2)、ヨウ化カリウム(KI)、エタノール(C2H5OH)を含む水溶液です。ヨウ素は単体では溶解しませんが、ヨウ化カリウム溶液中ではヨウ化物イオンとの反応により、三ヨウ化物イオンになって溶解しています。

三ヨウ化物イオンはとても酸化力の強いイオンで、単体で安定な金(Au)から電子を奪って、[AuI2]や[AuI4]の錯体イオンを作って溶解してしまいます。

金は非常に安定な金属で、鉄や銅のように容易に酸素と反応して酸化物を作ったり、酸に溶けたりすることはありません。

もちろん、酸素系洗濯用漂白剤(主成分は過炭酸ナトリウム:2Na2CO3・3H2O2)や浴室用カビ取り剤(主成分は次亜塩素酸塩:NaClO、水酸化ナトリウム:NaOH)にも溶解しません。

しかし、上記のヨウ素-ヨウ化カリウム溶液のように、ハロゲン‐ハロゲン化物が含まれる溶液や、王水(濃硝酸と濃塩酸を1:3で混合した溶液)、シアン化合物(シアン化ナトリウム:NaCNやシアン化カリウム:KCN)の溶液には錯イオンを作って溶解します。

これらの反応はめっき(材料の表面を金の薄膜で覆う)、エッチング(表面の不要部分を除去する)、金のリサイクルなど、電子工業分野で重要な技術として利用されています。

シカ博士がお答えします

 


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