
本特集は、食品試料におけるピロリジジンアルカロイド(PAs)の分析業務や研究に携わる方にお役立ちいただける情報を掲載しています。関東化学ではPAs分析に用いられる溶媒、標準品、カラム、機材類各種を取り揃えております。製品の詳細情報につきましては各製品のカタログもしくは製品ページをご覧ください
ピロリジジンアルカロイド(PAs)とは

PAsとはキク科、ムラサキ科、マメ科などの植物が産生する自然毒であり、ピロリジジン環を中心骨格とする化合物の総称です。PAsを含有する植物は約6,000種類と言われており、被子植物全体の約3%に相当します。PAsに該当する化合物はこれまで約600種類が知られており、天然ではPAsと酸化されたN-オキシド体の形で存在しております。構造によって毒性は異なりますが、一部のPAsはヒトや動物に対して強い肝毒性を持つことが知られております1)。
実際に海外ではPAsを含む食品の長期摂食、大量摂食による健康被害が報告されており、EUでは2022年より食品ごとに含有量の条件を設け、規制に乗り出しました。このような背景のもとPAsによる食品汚染実態調査、生体への影響等を目的とした研究、分析が国内外で注目を集めています。
国外での規制状況
EUでは2020年にCommission Regulation(EU)2020/2040により「特定食品中のPAsの最大レベルに関する規則」(ECNo.1881/2006)が改訂されました。これにより特定食品に含まれる全PAsの最大レベルが表1の通りとなり2022年7月より施行されました2)。
一方で、EUは施行前に上市された食品に関して2023年12月31日まで上記規制の適用範囲外とする「猶予期間」を設けました。この猶予期間が2024年1月1日に終了し、表1に示された全ての食品が規制対象となることから特にドイツ連邦リスク評価研究所 (Bundesinstitut fur Risikobewertung)を中心として分析方法の策定が進められております。
表1 Commission Regulation(EU)2020/2040で設定されたPAsの最大レベル
食品材料 | 最大レベル (μg/kg) | |
---|---|---|
8.4. | ピロリジジンアルカロイド | |
8.4.1. | ハーブ抽出物(乾燥製品) ただし、8.4.2および8.4.4のハーブ抽出物を除く。 | 200 |
8.4.2. | ルイボイス、アニス、レモンバーム、カモミール、タイム、ペパーミント、レモンバーナムのハーブ抽出物(乾燥製品)及びこれらの乾燥ハーブのみで構成される混合物 ただし、8.4.4に記載のハーブ抽出物を除く。 | 400 |
8.4.3. | 茶およびフレーバーティー(乾燥製品) ただし、8.4.4に記載されている茶およびフレーバーティーを除く。 | 150 |
8.4.4. | 茶およびフレーバーティー、乳幼児用ハーブティー(乾燥品) | 75 |
8.4.5. | 茶およびフレーバーティー、乳幼児用ハーブティー(液体) | 1 |
8.4.6. | ハーブ抽出物を含む栄養補助食品 ただし、8.4.7に記載されている栄養補助食品を除く。 | 400 |
8.4.7. | 花粉を使った栄養補助食品。花粉および花粉加工品 | 500 |
8.4.8. | 消費者向けに販売されるルリジサの葉(生、冷凍) | 750 |
8.4.9. | 8.4.10に記載されている乾燥ハーブを除くハーブ | 400 |
8.4.10. | ルリジサ、ロベージ、マジョラム、オレガノ(乾燥)及びこれらの乾燥ハーブだけで構成された混合物 | 1,000 |
8.4.11. | クミンシード(シードスパイス) | 400 |
国内での規制状況
日本国内ではPAsによる健康被害の報告はありませんでした。しかし、日本国内でも、PAsを含む植物が天然に生えていたり、栽培されていたりしております。加えて海外からPAsを含む植物を含む食品が輸入される可能性があることから、消費者の健康被害の発生を未然に防ぐための対応がとられています。その一環として厚生労働省は、2004年にムラサキ科ヒレハリソウ属のコンフリーを含む食品の流通、販売を禁止しました。
また、農林水産省は、2004年にPAsを含む植物(例:ムラサキ科のヒレハリソウ属及びキダチルリソウ属、キク科キオン属、マメ科タヌキマメ属)を飼料や飼料原料に使うことを禁止しました。しかし、一方でEUの様ように食品中のPAsについて具体的な数値で規制を設ける動きは見られないのが現状です。ただし、農林水産省はPAsを含む可能性がある食品(はちみつ、緑茶、ふきなど)について2015年以降含有実態調査を行っており、結果をホームページにて公開しております。
試験研究用試薬
PAs標準品(PhytoLab社)
PAsの標準品を各種取り揃えております。規制対象となる35物質(規制対象化合物21物質+共溶出規制対象化合物14物質)を始めとして、PAs標準品合計57品目を取り扱っております。
LC/MS用溶媒
PAsの分析はLC-MS/MSを用いた分析法が主流となっております。HPLC用溶媒にLC/MS適合性試験、金属成分保証を追加したLC/MS用溶媒はPAsの分析に適しております。
弊社ではPAsの分析で主に用いられるメタノール、蒸留水を取り扱っております。また、ぎ酸アンモニウム水溶液など溶媒に添加する添加剤の取り扱いもございます。
Mightysilシリーズ
金属不純物が極めて少ない高純度シリカゲルを使用した粒子充填型のHPLC用カラムです。
関東化学独自の合成反応により充填剤表面の極性基を極限まで不活性化(エンドキャッピング)し、高い耐久性と優れた分離特性を示します。
参照
1)農林水産省 食品中のピロリジジンアルカロイド類に関する情報
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/pyrrolizidine_alkaloids.html
2)EUR-Lex COMMISSION REGULATION (EU) 2020/2040
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32020R2040
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