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液体クロマトグラフィー関連特集

本特集は、化学、環境、食品、医薬品、材料などにおける液体クロマトグラフィーを用いた分析業務や研究に携わる方にお役立ちいただける情報を掲載しております。関東化学では、分析目的に応じて保証項目を設定した各種溶媒を取り揃えております。製品の詳細情報につきましては各製品のカタログもしくは製品ページをご覧ください。コラムでは、試薬に関する基礎知識をまとめています。皆様の日頃の業務の一助となりましたら幸いです。

  1. はじめに
  2. 高速液体クロマトグラフィー用溶媒「HLC-SOL」
     ー Plusシリーズ
     ー 日本薬局方 試薬「液体クロマトグラフィー用」適合品
  3. HPLC用(医薬品試験用)
  4. GPC用溶媒
  5. LC/MS用溶媒
  6. 添加剤・緩衝液
  7. プレミックス溶媒(調製済溶離液)
  8. オリゴヌクレオチド分析・精製用試薬
  9. コラム
     ー 溶離液の調製方法について
     ー 安定剤について
     ー 容器の洗浄比較について
     ー 作業環境からの汚染について
  10. お問い合わせ・お見積り依頼

1.はじめに

高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)とは、「液体の移動相をポンプなどによって加圧してカラムを通過させ、分析種を固定相および移動相との相互作用(吸着、分配、イオン交換、サイズ排除など)の差を利用して高性能に分離して検出する方法」と定義されており、「HPLC」と略されます。
HPLCで用いる移動相は溶離液とも呼び、分離・分析に重要な役割を果たします。移動相には、アセトニトリルやメタノールなどの有機溶媒、水や、塩類を添加した水溶液など単一もしくは混合液が用いられます。HPLC用溶媒には、分離に与える影響を最小限に抑えること、使用される検出器の妨害とならないことに加え、カラム・装置にも負荷を与えないことが求められます。
関東化学では、独自の精製技術により、これらの必要とされる品質基準を満たした溶媒を提供しております。

2.高速液体クロマトグラフィー用溶媒「HLC-SOL」

高速液体クロマトグラフィー用溶媒「HLC-SOL」は、特殊な技術により精製し、HPLCに必要とされる品質基準を満たした溶媒です。吸収波長域における溶媒吸光度を保証し、分析に与える影響を最小限に抑えています。また、ロット間のばらつきも基準値内で抑えており、クロマトグラフィーの再現性と検出感度を高めます。保証項目の内容は以下の表を参照ください。

保証項目 内容
UV吸光度 吸光波長域における溶媒の吸光度が基準値以下であることを保証しています
相対けい光強度 硫酸キニーネを標準としてけい光性不純物を保証しています
屈折率 示差屈折計を用いて物質を測定する場合、試料成分との屈折率差が大きいほど検出感度は向上します
不揮発性成分 分取液体クロマトグラフィー、あるいは分取薄層クロマトグラフィーにより純粋な物質を分取する際、この値は重要となります
過酸化物・酸度 酸により分解されやすい物質を分離する場合、この値は溶媒選択の目安となります
水分含量 吸着型のクロマトグラフィー担体を用いる場合、カラム劣化を防止し、かつ安定したクロマトグラムを得るために重要なファクターである、水分含量の最大値を明示しています
グラジエント試験 HLC-SOLアセトニトリルとHLC-SOL蒸留水を組み合わせたグラジエント溶出時のベースラインを確認しています。下記の図はHLC-SOLアセトニトリルと蒸留水、特級アセトニトリル、イオン交換水それぞれの組み合わせ時におけるベースライン変動を示しており、HLC-SOL同士の組み合わせが最も安定したベースラインが得られています
グラジエント試験によるHLC-SOLの評価
Plusシリーズ
  • パーティクル保証
    アセトニトリル、メタノール、蒸留水、2-プロパノールについて、パーティクル(溶媒中の微粒子)保証をしております。長年培った独自の製造技術と厳しい品質管理により、パーティクルの数値的な保証を実現しております。粒子径2 μm以下の超微粒子充塡カラムを用いる超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)や高感度化の進む各種検出器の使用に際し、より安心してご利用いただけます。
日本薬局方 試薬「液体クロマトグラフィー用」適合品

日本薬局方 試薬・試液には、「液体クロマトグラフィー用」として以下の8種類の溶媒が収載されております。

アセトニトリル エタノール(99.5) N,N-ジメチルホルムアミド テトラヒドロフラン
2-プロパノール ヘキサン ヘプタン メタノール

日本薬局方で規定されている吸光度の規格に適合していますので、医薬品試験にもご使用いただけます。該当製品の規格書、試験成績書には「日本薬局方 一般試験法 液体クロマトグラフィー用」に適合の旨を記載しております。

3.HPLC用(医薬品試験用)

弊社の独自規格をベースに「日本薬局方 液体クロマトグラフィー用」に適合し、さらに米国薬局方および欧州薬局方の液体クロマトグラフィー用規格を保証した製品です。アセトニトリルとメタノールについては、JIS特級の規格項目を追加し、JIS特級と液体クロマトグラフィー用の双方の用途でご利用いただけます。

HPLC用(医薬品試験用)のラベル例

4.GPC用溶媒

ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で汎用的に用いられる各種溶媒・試薬を取り揃えております。LC/MS用テトラヒドロフランは、相対けい光強度・LC/MS適合性試験を規格に加えておりますので、GPC/MS分析にも安心してご使用いただけます。

各種テトラヒドロフラン中の不純物比較(グラジエント法)


5.LC/MS用溶媒

質量分析計(MS)の普及に伴い、HPLC用に加えて「LC/MS用溶媒」を販売しております。MSは、分析種をイオン化し、生じたイオンの質量電荷比(m/z)の違いにより分離した個々のイオン強度を測定するため、他の検出器と比べて高い感度と選択性が得られることが特長です。しかし、揮発性有機化合物もイオン化して検出されることから、検出の妨害や感度低下に繋がります。移動相に使用する溶媒や添加剤には揮発性不純物量が少ないことが求められます。
 弊社のLC/MS用溶媒はHPLC用規格を踏襲しつつ、弊社独自のLC/MS適合性試験を実施しており、高感度化が進むLC/MS分析に安心してご使用いただけます。

LC/MS用溶媒の特徴
  • LC/MS試験適合性
    平均的なイオン化条件でMSに直接注入し、そのノイズレベルを測定。溶媒中の不純物レベルを総合的に確認・判断するLC/MS適合性試験を実施しております。
     
  • メタル保証
    溶媒中に金属不純物が含まれている場合、分析対象成分のイオン化が抑制されるイオンサプレッションの可能性があるため、主要な金属14成分※1について、ppmオーダー以下の保証をしています。
    ※1 金属(14種):Ba,Ca,Cd,Co,Cr,Cu,Fe,K,Mg,Mn,Na,Ni,Pb,Zn
     
  • PFAS試験適合性(アセトニトリル、メタノール、蒸留水)
    令和8年4月1日施行の「水質基準に関する省令」の改正により、PFOSおよびPFOAが水質基準項目へ引き上げられ、基準値として「PFOS・PFOA合算値50 ng/L以下」が設定されます。また、水質基準項目への格上げに伴い、水道事業者および水道用水供給事業者はPFOS・PFOAの測定が義務付けられるようになります。弊社のLC/MS溶媒(アセトニトリル、蒸留水、メタノール)は「PFAS試験適合性」試験にてPFOS・PFOA・PFHxSの含量が基準値以下であることを保証しています。

6.添加剤・緩衝液

LC/MSにおいて、ぎ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸はイオン化効率を向上させる目的で溶離液に添加されます。弊社ではこれら酸類を高度に精製しておりますので、LC/MS分析にも安心してご使用いただけます。溶離液のpH調整に用いられる、ぎ酸アンモニウム、酢酸アンモニウムは調製済みの緩衝液をLC/MS用規格でラインアップしておりますので、調製する手間が削減でき、再現性も高まります。

規格項目 1 mol/L 酢酸アンモニウム 1 mol/L ぎ酸アンモニウム
濃度 0.95~1.05 mol/L 0.95~1.05 mol/L
外観 無色澄明 無色澄明
吸光度 240 nm    0.04以下
254 nm    0.03以下
270~400 nm 0.01以下
240 nm    0.04以下
254 nm    0.03以下
270~400 nm 0.01以下
金属(14種)※1 各 1ppm以下 各 1ppm以下
LC/MS試験適合性 試験適合 試験適合
PFAS試験適合性 試験適合 試験適合

※1 金属(14種):Ba,Ca,Cd,Co,Cr,Cu,Fe,Na,K,Mg,Mn,Ni,Pb,Zn

7.プレミックス溶媒(調製済溶離液)

LC/MSでは、分析種のイオン化を促進させる目的で溶離液に酸類・塩類を添加することがありますが、調製の際には使用する容器や環境に由来する汚染に注意を払う必要があります。そのような手間を軽減すべく「0.1 vol% ぎ酸-アセトニトリル」「0.1 vol% ぎ酸-蒸留水」など、イオン化を促進させる成分を予め添加したプレミックス溶媒を販売しています。その他、水道水・食品添加物・医薬品の試験方法に用いる溶離液組成に準じた製品もラインアップしています。また、プレミックス溶媒の使用により、試薬管理の負担低減や廃棄試薬の低減に繋がる可能性もあります。
製品ラインアップのない溶離液については、特注溶離液としてご要望の組成比による溶液を調製してご提供しておりますので、お問い合わせください。

製品コード 製品名 規格 容量
01922-12 0.1 vol% ぎ酸-アセトニトリル LC/MS用 200 mL
01922-63 1 L
01922-64 3 L
16245-12 0.1 vol% ぎ酸-蒸留水 LC/MS用 200 mL
16245-63 1 L
16245-64 3 L
41132-79 0.1 vol% トリフルオロ酢酸-アセトニトリル HPLC用 1 L
41132-76 3 L
41133-79 0.1 vol% トリフルオロ酢酸-蒸留水 HPLC用 1 L
41133-76 3 L

8.オリゴヌクレオチド分析・精製用試薬

核酸医薬品は、天然型ヌクレオチドあるいは化学修飾型ヌクレオチドが十数~数十塩基連結したオリゴヌクレオチド構造を有しており、多くは化学合成により製造されます。オリゴヌクレオチドの分析・精製に使用される逆相クロマトグラフィーでは、イオン対試薬と有機溶媒を混合した溶離液が用いられます。イオン対試薬には、凍結乾燥中に昇華して除去しやすい性質を持つトリエチルアミン酢酸塩(TEAA)が汎用されているため、弊社では溶離液調製にそのまま使用可能な「2 mol/L TEAA溶液,pH 7.0」を販売しております。

規格項目 規格値
性状 試験適合
pH(25℃) 6.9 – 7.1
吸光度(260 nm) 0.002 以下

9.コラム

溶離液の調製方法について

溶離液は、分離に影響を与えるため正しい手順に従って調製する必要があります。 例として、アセトニトリル/水=30:70(v/v)の溶離液を調製する場合、以下に示す3種類の調製方法が考えられます。

調製方法が異なると、溶離液組成の比率も異なるため以下に示したクロマトグラムのように保持時間に差が現れます。一般的には、方法1のメスシリンダーを用いてアセトニトリル300 mL,水700 mLをそれぞれ計量し別容器にて混合した後、使用するのが一般的です。しかし、アセトニトリルに水を添加した方法2では、方法1よりわずかに水の比率が高くなり保持時間が遅くなります。逆に、水にアセトニトリルを添加した方法3の場合は、アセトニトリルの比率が高くなり保持時間が早くなります。理由は、アセトニトリルと水を混合すると体積が小さくなるため、後から加えた溶媒の量がわずかに多くなるためです。このように単純な溶離液組成の調製においても、方法が異なると保持時間に違いが生じるため混合方法、手順を明確にしておくことが重要です。

安定剤について

試薬は極力不純物となる物質を取り除いた状態で提供していますが、有機溶媒の中には長期間の保存において、化学的安定性の低い溶媒があります。空気中の酸素によって酸化されやすいテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒や、光によって分解されやすいクロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒が挙げられます。これらには安定剤を添加していますが、クロマトグラフィー分離を妨害しない安定剤の選択が必要です。以下にHPLC用と試薬特級に添加されている安定剤を示します。

溶媒名 HPLC用 試薬特級
クロロホルム Amylene Ethanol
ジクロロメタン Amylene Amylene
1,4-ジオキサン 2,6-Di-tert-butyl-4-methylphenol(BHT)
テトラヒドロフラン stabilizer free or BHT BHT

HPLC用THFは、安定剤無添加と安定剤入りの2種類をラインアップしています。 安定剤無添加については、過酸化物の生成が懸念され、開封後の劣化に注意する必要があるため、使い切りの小包装として200 mL包装も取り揃えております。安定剤入りについては、GPC用途における試料の安定性確保、溶離液の再利用などを目的としてラインアップしております。

HPLC用クロロホルムは、安定剤にアミレンを添加しています。アミレンは、順相系クロマトグラフィーで溶出力の弱い性質を示し、分離に対する影響力はほとんどありません。以下の図のように、HPLC用を使用した場合は2つの成分が分離されているのに対し、特級は保持力が弱くなるとともに分離度も低下しています。この理由は、安定剤として添加されているエタノールが、シリカゲル表面のシラノール基に吸着することにより、シリカゲルの活性度が低下し、保持力低下に繋がったと考えられます。そのため、シリカゲル等を用いる順相系クロマトグラフィーの注意点として、溶媒に含まれる水分の他に、添加される安定剤の影響も考慮して使用する必要があります。

容器の洗浄比較について

容器の洗浄方法によっても、分析結果に影響を及ぼします。以下、上段の図は、洗剤で洗浄したガラス容器にそのままLC/MS用アセトニトリルを移し、質量分析計に直接注入した際のマススペクトルの結果です。容器洗浄に使用した洗剤に由来する界面活性剤と思われる物質が検出されていることが分かります。一方、下段の図は洗浄後のガラス容器を溶媒で共洗いをした後、同条件で測定した結果ですが、共洗いにより影響を低減できたことが分かります。自家調製した移動相なども同様に、使用する容器によっては測定に影響を及ぼす場合がありますので、必要に応じて共洗いを実施することが重要となります。

作業環境からの汚染について

溶媒は、作業環境による影響も考慮する必要があります。以下はLC/MS用メタノールを開封直後と開栓後数時間放置したものをESI法で比較した図になります。開栓後は作業環境中の有機物によって汚染されていることが分かります。そのため、開封後の溶媒の取り扱いにも注意する必要があります。弊社では、使い切り包装として200 mL包装品のLC/MS用溶媒も取り揃えております。詳細はカタログをご参照ください。

10.お問い合わせ・お見積もり依頼

本件についてのお問い合わせおよびお見積り依頼はこちらよりお願いいたします。
お見積りは最寄りの弊社支店・営業所もしくは販売店よりご回答いたします。