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第十八改正日本薬局方について(日局特集第3回)

令和3年6月7日に、第十八改正日本薬局方が施行されました。本改正では、最新の学問・技術の積極的導入による質的向上および医薬品のグローバル化に対応するため、全面的な見直しが行われるとともに、多数の医薬品各条等が新規収載されました。
本特集では、第十八改正の中でも特に試薬に関するお問い合わせの多い改正内容についてまとめています。皆様の日ごろの業務の一助となりましたら幸いです。

日局特集第3回:残留溶媒試験

第十八改正日本薬局方より、「「医薬品の残留溶媒ガイドラインの改正について」 の廃止について」 (令和元年12月20日付薬生薬審発1220第9号 ) の発出を踏まえて、エチレングリコール (クラス2) のPDE値及び濃度限界値が改正されました。
また、医薬品規制調和国際会議 (以下、ICH) において、新たに3種の溶媒のPDE値について合意されたことから、「医薬品の残留溶媒ガイドラインについて」の一部が改正され、2022年9月1日以降に申請される、新医薬品に対し適用されることになりました。

1.残留溶媒の管理
2.規制値の改正
-JP18改正溶媒<エチレングリコール>
-医薬品の残留溶媒ガイドライン 新規追加溶媒
-改正版 医薬品の残留溶媒ガイドライン一覧表 (参考:厚生労働省通知) 
3.関連製品 (ヘッドスペース法/ガスクロマトグラフィー) 
-標準液・試料調製関連製品
-ヘッドスペース関連商品【アジレント・テクノロジー (株)】
-ガスクロマトグラフィー関連商品【アジレント・テクノロジー (株)】
-その他合成関連溶媒
4.お問い合わせ・お見積り依頼

1.残留溶媒の管理

日本薬局方では、残留溶媒とその扱いについて 「医薬品(生薬及び生薬を配合した製剤を除く.以下同様.)中の残留溶媒は,原薬若しくは添加剤の製造工程又は製剤の製造工程で使用されるか生成する揮発性有機化学物質と定義される. 実生産工程で用いられている技術では,それらの溶媒を完全には除去できない. 原薬の合成工程では,溶媒を適切に選ぶことにより,収率を向上させたり,結晶形,純度,溶解性といった原薬の物性を決めたりすることができる場合がある. このように,溶媒は時として製造工程における重要なパラメーターとなり得るものである. 本試験法は,添加剤として意図的に用いられる溶媒及び溶媒付加物は対象としない. しかしながら,そのような場合においても,製剤中の溶媒の含量を評価し,その妥当性を示す必要がある. 残留溶媒が治療に役立つことはないので,全ての残留溶媒は,製品規格,GMP又はその他の品質基準に適合し得るようなレベル以下に減らすべきである.」 と記載されています。

また残留溶媒試験に関しては、 「原薬,添加剤及び製剤は,その製造又は精製の工程の後にも溶媒が残留するような場合には,その溶媒の試験を行う必要がある.」 と記載されています。

以上より、残留溶媒は日本薬局方によって定められる規制値に従い、試験を行う必要があります。

2.規制値の改正

JP18改正溶媒 <エチレングリコール>
  クラス PDE (mg/day)  濃度限度値 (ppm) 
改正前 2 3.1 310
改正後 2 6.2 620
医薬品の残留溶媒ガイドライン 新規追加溶媒
  クラス PDE (mg/day)  濃度限界値 (ppm) 
シクロペンチルメチルエーテル 2 15 1,500
t -ブチルアルコール 2 35 3,500
2-メチルテトラヒドロフラン 3 50 -
改正版 医薬品の残留溶媒ガイドライン一覧表 (参考:厚生労働省通知) 

該当するクラスをクリックいただくと、改正箇所を反映させた表をご覧になれます。

クラス1:医薬品の製造において使用を避けるべき溶媒
《変更なし》

溶媒 濃度限界値 (ppm)  考慮した点
ベンゼン    2 発がん性
四塩化炭素    4 毒性及び環境への有害性
1,2-ジクロロエタン    5 毒性
1,1-ジクロロエテン    8 毒性
1,1,1-トリロロエタン 1,500 環境への有害性

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クラス2:医薬品中の残留量を規制すべき溶媒
《医薬品の残留溶媒ガイドライン追加(★):2件、 JP18改正溶媒(◎):1件》

溶媒 PDE (mg/day)  濃度限界値 (ppm) 
アセトニトリル 4.1      410     
クロロベンゼン 3.6      360     
クロロホルム 0.6      60     
クメン 0.7      70     
シクロヘキサン 38.8      3,880     
★シクロベンチルメチルエーテル 15       1,500     
1,2-ジクロロエテン 18.7      1,870     
ジクロロメタン 6       600     
1,2-ジメトキシエタン 1       100     
N,N-ジメチルアセトアミド 10.9      1,090     
N,Nジメチルホルムアミド 8.8      880     
1,4-ジオキサン 3.8      380     
2-エトキシエタノール 1.6      160     
◎エチレングリコール 6.2      620     
ホルムアミド 2.2      220     
ヘキサン 2.9      290     
メタノール 30       3,000     
2-メトキシエタノール 0.5      50     
メチルブチルケトン 0.5      50     
メチルシクロヘキサン 11.8      1,180     
メチルイソブチルケトン 45       4,500     
N-メチルピロリドン 5.3      530     
ニトロメタン 0.5      50     
ピリジン 2       200     
スルホラン 1.6      160     
t -ブチルアルコール 35       3,500     
テトラヒドロフラン 7.2      720     
テトラリン 1       100     
トルエン 8.9      890     
1,1,2-トリクロロエテン 0.8      80     
キシレン 21.7      2,170     

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クラス3:低毒性溶媒 (GMP又はその他の品質基準により規制されるべき溶媒)
《医薬品の残留溶媒ガイドライン追加(★)》
溶媒
酢酸  酢酸イソブチル 
アセトン  酢酸イソプロピル 
アニソール  酢酸メチル 
1-ブタノール  3-メチル-1-ブタノール 
2-ブタノール  メチルエチルケトン 
酢酸n-ブチル  2-メチル-1-プロパノール 
t -ブチルメチルエーテル  ★2-メチルテトラヒドロフラン
ジメチルスルホキシド  ペンタン 
エタノール  1-ペンタノール 
酢酸エチル  1-プロパノール 
ジエチルエーテル  2-プロパノール 
ギ酸エチル  酢酸プロピル 
ギ酸  トリエチルアミン
ヘプタン   

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適当な毒性データが見当たらない溶媒
《変更なし》

溶媒
1,1-ジエトキシプロパン  メチルイソプロピルケトン 
1,1-ジメトキシメタン  メチルテトラヒドロフラン 
2,2-ジメトキシプロパン  石油エーテル 
イソオクタン  トリクロロ酢酸 
イソプロピルエーテル  トリフルオロ酢酸 

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3.関連製品 (ヘッドスペース法/ガスクロマトグラフィー) 

日本薬局方では、残留溶媒試験において、ヘッドスペース-ガスクロマトグラフィーの方法が記載されています。

下記の画像をクリックすると、該当製品・商品のページをご覧になれます。
   
airtight_bottle GC/MS

標準液・試料調製関連製品

残留溶媒試験用試薬
・使い方に合わせた3タイプの包装
・メタノール等の低沸点不純物低減
・独自の残留溶媒適合試験により品位を保証
・保証期限 (年・月・日) をラベルに表示
・試験成績書に検査日 (年・月・日) を表示

《N,N-ジメチルホルムアミド GCブランク例》

【GC測定条件】
カラム:DB-WAX
 (内径0.53 mm、長さ60 m、膜厚1 µm) 
注入口温度:200℃
スプリット比:5:1
カラム温度:40℃ (0分) -3℃↑/分-100℃ (0分) -10℃↑/分-230℃
試薬注入量:5 µL
検出器:FID
検出器温度:250℃
製品名 沸点 包装 製品番号
N-メチル-2-ピロリジノン 202℃ 100 mL 25336-24
500 mL 25336-02
L 25336-67
N,N-ジメチルホルムアミド 153℃ 100 mL 10344-23
500 mL 10344-07
L 10344-79
ジメチルスルホキシド 189℃ 100 mL 10400-23
500 mL 10400-07
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン 225℃ 500 g 11208-07

最新の価格は、製品番号をクリックして、Cica-Webよりご確認ください。

★コラム ~試薬の選び方~
当社では、分析対象化合物の物性や検体数に応じてお選びいただけるラインナップを取り揃えております。
下記のタイトルをクリックいただくと、対応したコラムがご覧いただけます。

①試薬の種類

残留溶媒試験では、分析対象となるサンプルの溶解性が高く、沸点が高い物質が用いられます。
以下の表に4種類の溶媒の特徴を掲載しておりますので、用途に応じて適切な溶媒をお選びください。

名称(略称) 沸点 ポイント
N,N-ジメチルホルムアミド 153℃ ・低沸点溶媒を対象とした残留溶媒試験に主に使用される溶媒
・JP18に記載
ジメチルスルホキシド 189℃ ・DMFを対象とした残留溶媒試験やDMFよりも高沸点溶媒を対象とした試験に使用される溶媒
・ヘキサン等の疎水性溶媒は不溶
・JP18に記載 (DMFと代替可能)
N-メチル-2-ピロリジノン 202℃ ・DMSOよりも熱安定性、溶解性が高い溶媒
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン 225℃ ・当社残留溶媒試験用試薬のなかで最も沸点が高く、溶解性に優れた溶媒
・特に非プロトン性極性溶媒を主なターゲットにする場合にお勧め
・EPに記載

★コラム ~試薬の選び方~ トップへ戻る

②試薬のサイズ

保管庫内には様々な有機溶媒が揮発している可能性があり、試薬を開封後に保管される場合はコンタミネーションが懸念されます。
当社では検体数や使用量に応じて適切な包装をご選択いただけるように、3タイプの包装をご用意しております。

包装 ポイント
100 mL ・少ない検体数、使用量でも無駄なく使える、使い切りタイプ
500 mL (g) ・スタンダードにご使用いただけるタイプ
1 L ・検体数が多いときでも、同一ボトルの溶媒で試験を行える
・大きすぎず、試薬の無駄を最小限に抑えられるハンドリング性を兼ね備えたタイプ

★コラム ~試薬の選び方~ トップへ戻る

高気密保存びん
・関東化学オリジナル設計、国内生産
・極めて気密性の高いガラス容器
・独自のネジ形状のガラスボトルとPTFE製の特殊栓の組み合わせ
・揮発性の試料、標準液の長期保存が可能
詳しくはこちら (PDF) をご覧ください。
高気密保存びん

ヘッドスペース関連商品【アジレント・テクノロジー (株)】

バイアル瓶、クリンプキャップ
・USPとEPの要件に準じた、第1級加水分解性クラスのホウケイ酸ガラスで製造
・平底または丸底の10 mLと20 mLのサイズをご用意
バイアル瓶・クリンプキャップ
製品名 製品仕様 包装 製品番号 メーカー番号
ヘッドスペース
クリンプバイアル 20 mL
23×75 mm (平底) 
透明 (目盛およびラベル付) 
100 個 95250-09 5190-2288
23×75 mm (平底) 
茶色 (目盛およびラベル付) 
100 個 95250-10 5190-2286
セプタム付 銀アルミ
クリンプキャップ
安全構造
PTFE/シリコンセプタム
100 個 95250-41 5183-4478
安全構造
モールドPTFE/ブチルセプタム
100 個 95250-43 5183-4480
PTFE/シリコンセプタム 100 個 95250-40 5183-4477
ヘッドスペース
バイアルキット 20 mL
平底 透明
モールドPTFE/シリコンセプタム
100 個 95250-47 5182-0840

製品の最新の価格は、製品番号をクリックして、Cica-Webよりご確認ください。

クリンパ (閉栓器具) /デキャッパ (開栓器具) 
・電動式で作業負担が軽減
・一貫性のある操作による人的誤差の軽減
・生産性の向上による、時間短縮
・長寿命のリチウムイオンバッテリー付
製品名 製品仕様 包装 製品番号 メーカー番号
オートクリンパ
リチウムバッテリー付
11mmキャップ用 1パック 95253-52 5191-5616
20mmキャップ用 95253-53 5191-5615
オートデキャッパ
リチウムバッテリー付
11mmキャップ用 1パック 95253-54 5191-5614
20mmキャップ用 95253-55 5191-5613
オートクリンパ用
ベースユニット
- 1パック 95253-40 5190-4066
交換用リチウムバッテリ クリンパ/デキャッパ共通 1パック 95252-09 5190-3192
最新の価格は、製品番号をクリックして、Cica-Webよりご確認ください。
※マニュアルタイプのクリンパ/デキャッパについても取り扱っております。
オートクリンパ/デキャッパ使用動画


 

ガスクロマトグラフィー関連商品【アジレント・テクノロジー (株)】

推奨カラム
Agilent J&W DB-Select 624UI <467>
・微量活性対象化合物の分離をより高い信頼性で実行可能な中極性の固定相
・USP<467>に対応
・アプリケーションデータはこちら
Agilent J&W DB-WAX UI
・アルコール、ジオール、アルデヒドなどの高活性化合物の吸着や分解を
最小限に抑制する高極性の固定相
・独自処理の高い不活性度により、微量でも高い感度と分離能
・アプリケーションデータはこちら
残留溶媒試験対応カラム

  JP18記載
操作法
内径
 (mm) 
長さ
 (m) 
膜厚
 (µm) 
温度限界
 (℃) 
部品番号
Agilent J&W
DB-Select 624UI
<467>
水溶性-A 0.32 30 1.8 -20~260 123-1334UI
水溶性-A
非水溶性-A
0.53 30 3.0 -20~250/260 125-1334UI
Agilent J&W
DB-WAX UI
水溶性-B 0.32 30 0.25 -20~250/260 123-7032UI
水溶性-B 0.53 30 3.0 -20~230/240 125-7031UI
JP18「Ⅱ.残留溶媒の確認,定量法」に記載のカラム条件はこちら
  水溶性試料の操作法 ※1 非水溶性試料の操作法 ※2
操作法A 操作法B 操作法A
内径 0.32 mm (または0.53 mm) 0.32 mm (または0.53 mm) 0.32 mm (または0.53 mm)
長さ 30 m 30 m 30 m
厚さ 1.8 µm (または3.0 µm) 0.25 µm 3.0 µm
フューズドシリカ管
(またはワイドボア管)
フューズドシリカ管
(またはワイドボア管)
フューズドシリカ管
(またはワイドボア管)
被覆 6%シアノプロピルフェニル
94%ジメチルシリコーンポリマー
100%ポリエチレングリコール 6%シアノプロピルフェニル
94%ジメチルシリコーンポリマー
カラム温度 40℃ (20分保持)
→10℃/分
→240℃昇温 (20分保持)
50℃ (20分保持)
→6℃/分
→165℃昇温 (20分維持)
40℃ (20分保持)
→10℃/分
→240℃昇温 (20分保持)
注入口温度 140℃ 140℃ 140℃
検出器温度 250℃ 250℃ 250℃
キャリヤーガス ヘリウム ヘリウム ヘリウム
流量 約35 cm/秒 約35 cm/秒 約35 cm/秒
スプリット比 1:5 1:5 1:3

※1 水溶性試料の操作法Cに関しては、結果に応じて操作法Aまたは操作法Bに準ずる。
※2 非水溶性試料の操作法B、Cに関しては操作法Aに準ずる。

 

なお参考資料として、USP<467>の概要、分析データおよび関連商品を掲載した、「医薬品の残留溶媒分析」のパンフレットをご覧いただけます。
医薬品の残留溶媒分析(アジレント・テクノロジー (株) 提供)
https://www.chem-agilent.com/pdf/low_5991-8659JAJP.pdf

その他関連消耗品
ライナー

ライナ
・手を触れることなく、迅速かつ簡単にライナを交換可能なタッチレスパッケージを採用
・O-リング接続済みのため、接触による汚染リスクの低減
ウルトライナートライナ(アジレント・テクノロジー (株) 提供)
https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1001856

注入口セプタム

注入口セプタム
・400℃の最高使用温度に加え、ブリードが低く、ノイズが出にくい

その他合成関連溶媒

弊社では、各種用途に応じた高品位な溶媒を取り扱っております。
詳しくは以下のリンクを参照下さい

溶媒 ポイント
医薬品製造用溶媒 ・JPまたはJPE、USP、EP規格に適合
・重金属、有機不純物を低減した高純度グレード
・適正な管理により、コンタミリスクを低減
原薬合成用溶媒 ・低ベンゼン保証 (1 ppm以下) 
・不揮発物、水分を低減した高純度溶媒
・適正な管理により、コンタミリスクを低減
Primepure®シリーズ ・30項目を超える保証スペック
・20元素以上の金属不純物をppbレベルで保証
・有機不純物の低減
有機合成用脱水溶媒 ・ハイレベルな精密合成にも対応
・実験室の安全性確保
・ラボスケールから、工業スケールまで

4.お問い合わせ・お見積もり依頼

本件についてのお問い合わせおよびお見積り依頼はこちらよりお願いいたします。
お見積りは最寄りの弊社支店・営業所もしくは販売店よりご回答いたします。