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特集1:社会を支えるJCSS標準液

化学物質測定において「ものさし」の役割を果たす標準物質。関東化学は、国家計量標準にトレーサブルな標準液、さらには世界に通用する品位をそなえた標準液の供給を通じて社会に貢献しています。

化学物質測定における標準物質

長さを測る場合はものさし、重さを量る場合は分銅というように、計量の際には基準となるものが必要です。このものさしがくるっていると測定結果はおかしなものになってしまい、逆に同じものさしを用いることにより、世界中どこで測定しても同じ結果を得ることができます。
水質や大気などの環境分析、また最近では食品中の残留農薬試験など、さまざまな場面で実施される化学物質の測定においては、「標準物質」がこのものさしの役割を果たしており、「標準物質」の信頼性が測定結果を信頼できるものとする証となります。

国家計量標準にトレーサブルな標準液の供給

水質汚濁や大気汚染などの公害問題が顕在化し、カドミウム等の有害金属に関する微量分析の必要性が高まるなか、1960年代後半に原子吸光分析装置が開発され、金属分析は大きく進歩しました。当社では、この原子吸光分析における標準として不可欠な「原子吸光分析用 金属標準液」の供給をいち早く開始しました。
その後、計量行政審議会が確かな標準の検査制度導入を推進し、公的検査機関である財団法人 化学品検査協会(現 財団法人 化学物質評価研究機構)によって検査確認された当社の金属標準液は、原子吸光分析装置の普及とともに市場へ大きく浸透していきました。

当社が供給する各種標準液
当社が供給する各種標準液

1993年には「計量法トレーサビリティ制度(JCSS※)」が創設され、当社は創設と同時にJCSS認定事業者(現在の登録事業者)としての認定を受け、国家計量標準にトレーサブルな標準液の供給を開始しました。現在は、ISO9001による品質保証やISO/IEC17025にもとづく試験所認定、GLP・GMPにおける医薬品等の品質管理において、計量標準による精度管理が信頼性保証のための条件となっています。そのため、JCSS登録事業者である当社が供給する各種標準液(金属・イオン標準液、pH標準液)は、金属の定量分析やpH測定等における共通のものさしとして、分析機関をはじめとする各分野においてなくてはならないものとなっています。
※Japan Calibration Service System:計量法トレーサビリティ制度

トレーサビリティ制度と不確かさ

JCSSは、1993年11月の改正計量法により、国家計量標準にトレーサブルな計量標準を産業界へ供給することを目的に創設されました。
食料品のトレーサビリティにおいては、原材料の由来や加工状況などの情報を追跡できるかどうかが信頼性の指標と言えますが、計量のトレーサビリティでは、切れ目のない連鎖により「不確かさ」が付与された国家標準にトレーサブルな計量値が信頼性を表すものとなっています。「不確かさ」とは、真の値が存在する範囲を示す推定値で、真値がその範囲の中にある確率を示しており、この考え方がJCSSに導入されるまでは、表示された濃度等の信頼性は、「正確さ」、「精度」、「誤差」などと表現されていました。

計量法トレーサビリティ制度(JCSS)
計量法トレーサビリティ制度(JCSS)

JCSS標準液の国際化

JCSS標準液の国際化

2005年よりJCSSに「国際MRA(Mutual Recognition Arrangement)対応JCSS認定事業者」制度が導入され、その認定を受けた当社は、国際機関にも通用する事業所として新たにスタートしました。国際MRAとは、1回試験すればその結果が世界のどこでも通用する「One-Stop-Testing」を目的に、ILAC(国際試験所認定協力機構)の加盟機関が国際相互承認協定を設け、厳格な評価の上、相互に国際規格への適合性を認めているというものです。
当社の標準液には、「国際MRA対応JCSS認定事業者」のシンボルマークを付した証明書が添付され、その標準液が国際的に受け入れられる品位であることを示しています。

標準物質のさらなる展開

近年、残留農薬をはじめとする化学物質の安全性が社会問題となっており、分析する化学物質の数も増加の一途をたどっている状況下、分析手法は一物質ごとの分析から複数の物質を同時に分析する一斉分析へと移行しつつあります。
標準物質においても単一物質ではなく、利便性の高い混合標準液の開発が望まれており、当社ではこの要望にお応えするため、金属、陰イオンおよび揮発性有機化合物※などの混合標準液という新たな分野の認定取得に向けた検討を進めています。
ひとつのJCSS標準液が完成するまでには、試験方法の確立、保存安定性の確認、校正方法の確立など、関係機関(NMIJ、CERI)を含め多くの労力が費やされます。当社では、常に「確かな品質」にこだわり、標準物質の開発に関する関係機関への協力と市場への安定供給を行ってきました。今後も国際的な適合性を持った製品のメーカーとして責任ある態度で供給を続け、社会に貢献していきます。
※一部商品化済みです。

関係者の声

一般財団法人化学物質評価研究機構 東京事業所 化学標準部 部長 松本 保輔 氏

一般財団法人化学物質評価研究機構
東京事業所 化学標準部 部長 松本 保輔 氏

関東化学は、JCSS制度開始とともに、認定事業者(現 登録事業者)の資格を得てJCSS標準液の供給を開始し、化学分析による測定データの信頼性確保に寄与してきました。また、揮発性有機化合物の測定に対応した有機系標準物質の新規標準物質の開発に当たっては、高純度物質の精製など、高い技術によりJCSS制度の発展にも貢献していただきました。
当機構は、JCSS制度の指定校正機関とし、範囲の拡大を目指して引き続きユーザーニーズの高い標準物質の開発を進めており、それらの成果を踏まえた新規標準液の供給が拡大することを期待するものです。
標準物質は、ある特定の範囲内で通用すればよいという時代から、国際規格、国際文書などで定められた方法にもとづいて製造され、その素性が明確なものでなければ世界には通用しない時代へと変化しています。このためにも使用者、供給者、関係機関の国際的視点にもとづく対応が今後一層重要になるものと考えられます。
[2008年10月]

関係者の声

草加工場 試薬生産技術部 部長 渡部 良一

草加工場 試薬生産技術部
部長 渡部 良一

標準物質は、その信頼性が最大の使命であると考えています。そしてその信頼性を保証するものとしてJCSS登録事業者制度が存在します。金属標準液の製造は、「金属もしくはその塩を一定濃度の酸に溶解し、特定二次標準液による値付けを行う」という他の複雑な合成反応から見れば簡単な工程ですが、方法は妥当性があるか、作業者の技術能力は問題ないか、機器は校正されているか、環境からの汚染はないか、均質性は確認できているかなど、作業の確実な実施の証明は非常に難しいことを改めて実感しています。標準物質の製造は地道な作業の積み重ねですが、これまでの関係者の努力により着実に品質や値付けの信頼性が向上しているものと自負しています。これからも国家標準にトレーサブルな標準物質を供給する重要な職務を担っているという責任感のもと、技術能力の向上に努め、より一層信頼される標準物質の製造に取り組んでいきます。