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特集2:電子機器の製造を支える機能性薬品

現代生活の必需品であるパソコン、テレビ、携帯電話など、意外と知られていませんが、これらの電子機器に搭載される半導体やディスプレイなどの製造工程では多くの化学薬品が使用されています。関東化学は、高品質で高性能な電子工業用薬品の供給を通じて社会に貢献しています。

電子デバイス製造における関東化学の薬品

電子デバイス製造における関東化学の薬品

半導体や液晶ディスプレイなどの電子デバイスの製造工程では、シリコンウェーハやガラス基板の洗浄、トランジスタ間を接続する金属配線のエッチングなどの用途で薬品が使用されており、プロセスの目的に応じていろいろな種類の薬品が使い分けられています。数十nmレベルのごく微小なゴミ(パーティクル)や金属不純物(メタル)が製品欠陥の原因となる半導体やディスプレイの製造現場では、使用される薬品は高品質(高純度・高清浄度)でなくてはなりません。

当社は電子工業用として、メタル・パーティクルを極限まで低減させた酸、アルカリ、溶剤類の超高純度薬品を約50年間供給し続けています。また、プロセスの目的によっては単一の薬品では得られない性能が必要とされる場合が多くあります。このため当社は数種の薬品を混合し、その成分や組成を調整することで必要な性能を持たせた薬品を「機能性薬品」として開発・販売しています。機能性薬品には高品質であることはもちろんのこと、高性能であることが求められます。当社は長年の経験で得た薬品に関するノウハウを活かし、お客様の要望に応じた多くの機能性薬品を開発してきました。

高精細液晶テレビの普及を支えたエッチング液

今回は数ある機能性薬品の中でも、「Ti(チタン)/Al(アルミニウム)/Ti積層膜一括エッチング液」について紹介します。
この製品は、特に液晶テレビや携帯電話などに搭載される液晶ディスプレイの製造工程において使用されます。液晶ディスプレイ上には、表示に関わる画素を構成する薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)」と呼ばれる電極構造が一面に配置されています。TFTの電極材料は、使用される金属の種類や構造形態の最適化により高精細表示や高速応答が可能になるため、ディスプレイメーカーでの研究・開発が盛んに行われてきました。

そのなかで採用され始めたのがTi/Al/Ti積層膜です。TFT電極の形成工程では、ガラス基板上に電極材料となる金属(Ti/Al/Ti)を一面に成膜し、写真の現像と同様の手法を用いて金属膜上に求められる構造になるようなパターンデザインを転写した後、不要な部分を除去するためにエッチングが行われます。

TFT電極の形成工程(金属成膜~エッチング)
TFT電極の形成工程(金属成膜~エッチング) TFT電極の形成工程(金属成膜~エッチング)

エッチング技術は主に、反応性気体(ガス)を用いるドライエッチングと、薬液を用いるウェットエッチングの2種類に分けられます。ドライエッチングは加工精度が高いというメリットがある反面、使用するガスの危険性が高い、環境負荷が大きい、使用する装置が高価などのデメリットがあります。一方、ウェットエッチングはドライエッチングに比べると加工精度はやや劣るものの、安全性やコスト面ではそれを上回ります。

一般的にAlは、りん酸や硝酸を混合した液でエッチングされますが、Tiは耐薬品性が高く、ウェットエッチングが難しい材料です。従来、Ti/Al/Tiをエッチングする場合はドライエッチングで3層を一括除去する方式か、Tiをドライエッチング、Alをウェットエッチングする多段階の方式が採用されていました。

エッチング後の断面形成
エッチング後の断面形成

どちらの場合もドライエッチング設備を導入しなければならず、製造コストが高くなってしまうことがディスプレイメーカーを悩ませていました。しかしながらTiも一部の薬品には溶解されるため、当社はTiとAlを同時に溶解することが可能なTi/Al/Ti積層膜一括エッチング液の開発に着手しました。

できる限り早く市場ニーズに応えられるように検討を重ねた結果、Ti/Al/Ti積層膜を一括でエッチングでき、さらに加工精度が良好であるなどの条件を満たしたエッチング液の製品化に成功しました。このTi/Al/Ti積層膜一括エッチング液は、多くのディスプレイメーカーで採用され、歩留まりの向上およびコスト低減に寄与することができ、液晶ディスプレイ製品が市場に広く普及することに貢献しました。

また、ドライエッチングからウェットエッチングへ転換したことで、製造現場での安全性が高まり、環境負荷ガスの使用量を削減できたなどのメリットも得られました。このように薬品の開発にあたっては、お客様の要望する性能を満たすことが最も重要ですが、当社は性能面だけではなく、安全性や環境への配慮も重要なポイントとして製品開発に取り組んでいます。

今後の展開

電子デバイス業界ではDRAMやフラッシュメモリの微細化、FPDの大型化、高精細化、高機能化にともない新規材料が採用されるなどの技術革新が進んでいます。同時に薬品に対しては、さらに高品質で高性能であることが求められています。これまでも当社は、デバイスの技術革新にともない超高純度薬品の高品質化に挑み、時代のニーズに応えてきました。また、材料ごとに薬品との相性が異なるため新たな材料に適した薬品の選定をしながら、より高性能な機能性薬品の開発に取り組んできました。今後も最先端の技術にいち早く対応できるように研究・開発に注力し、電子デバイスの発展を支える電子工業用薬品の供給を通して社会に貢献していきます。

関係者の声

Ukai Display Device Institute 代表 鵜飼 育弘 氏

Ukai Display Device Institute 代表
鵜飼 育弘 氏

私は、a-Si TFT-LCDの黎明期からTFT-LCDのR&Dと事業化に従事し、その後低温ポリシリコン(Low Temperature poly Si: LTPS)TFT-LCDの量産立ち上げおよび開発に従事してきました。TFT-LCDは、大型化、高精細化、高品位化等の弛まない開発と商品化で一大産業を築くことができました。TFT-LCDの大型化、高精細化に欠かせない技術は、低抵抗配線材料の実用化でした。当初は高融点材料が用いられていましたが、最近では低抵抗配線材料としてAlがa-Si TFTおよびLTPS-TFTの主流になっています。Al単体では基板ガラスや構成膜との相性が良くないため、Ti/Al/Tiの積層膜が多く用いられています。当初は、積層膜のエッチングはウェットとドライのハイブリッド・エッチングプロセスが適用されていました。しかし、工程が複雑でしかも基板サイズの大型化に適しませんでした。
関東化学から提供されたTi/Al/Ti積層膜の一括ウェットエッチング液は、これらの課題を解消できるとともに、コスト削減および環境に優しいプロセスが実現できます。その結果、生産設備および付帯設備の投資削減、ランニングコスト削減および歩留まり向上に貢献いただきました。
最近、ポストSi-TFTとして酸化物半導体が注目を浴びています。なかでもAl電極によるトップゲート構造の自己整合型IGZO-TFTが発表されました。したがって、次世代TFTのプロセスにも、このエッチング液が重要になると思われます。このため、メーカーとユーザーの連携は今まで以上に重要になりますので、今後ともこの分野での貢献を期待しています。
[2011年10月]

関係者の声

電子材料事業本部 技術部 笹垣 美紀

電子材料事業本部 技術部
笹垣 美紀

機能性薬品の開発には多くの研究員や技術員が携わり、それぞれ個別の案件に取り組んでいます。その中で共通しているのが「高性能な薬液を開発すること」はもちろんのこと、「環境に負荷を与える薬品や安全性に懸念のある薬品の含有は避ける」という姿勢です。特に、環境や生態系に有害な恐れのある物質の排出を抑制する化学物質管理促進法(PRTR法)に該当する薬品は、含有成分を選定する段階で候補から外す場合がほとんどです。
また、最近では化学物質の有害性に関する調査研究が進み、新たに生殖毒性などの安全性に懸念をもたれ始めたものもあります。当社でも過去に開発した機能性薬品のなかにそういった成分を含んだものもありますが、現在は安全性の高い成分への転換を図るための検討に注力しています。これからも高性能・環境配慮・安全性のそれぞれに重点を置きながら新しい機能性薬品の開発に取り組んでいきます。